プリキュアの数字ブログ

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ひたすら重い。けど読んで後悔はしない。小説スイートプリキュア♪感想

「小説スイートプリキュア♪」を読みました。
(ネタバレ分少な目ですが、少し内容に触れている部分もございますので未読の方は注意してください)

どう感想を書いていいのかちょっと悩む小説だったのですが、
プリキュアという作品が好きな方であれば、絶対に読んでおいて欲しいと思いましたので感想を書いておきたいと思います。

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「重い」

 この小説、ひたすら「重い」描写が続くのです。
この重い描写のおかげで最後まで読めない人がいるのじゃないかと心配するくらいです。(TV本編の1~3話を濃縮した感じでしょうか。)
特に「スイートプリキュア♪」に強い思い入れのある方ほど「重さ」を感じるのではないでしょうか。
しかし。
ぜひ。
くじけずに最後まで読んでほしいのです。

読後には「スイートプリキュア♪」という作品がもっともっと好きになることは間違いないのです。
着実に大人へと成長していく、スイートプリキュアの4人をぜひ見届けてあげてください。

でね。
言いたいことは沢山あるのですよ。 

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「小説 北条響♪」

「小説スイートプリキュア♪」というよりも「小説 北条響♪」ですよね、これ。

テレビ放送最終回から半年後を舞台とし、キュアメロディこと北条響の1人称で語られるお話です。ドイツへのピアノ留学を前に色々と思い悩んでいます。

この作品、読者にストレスをかけて、ストレスをかけて、ストレスをかけて、最後にカタルシスを呼び起こすタイプの小説です。
(このストレスをかける時点が個人的には本当にツラくて、あの最高仲良し4人組がここまですれ違いを見せ、辛辣な態度を見せるのか、と何度も読むのをくじけそうになりました。(最後にハッピーエンドになるのはわかっているとはいえ、スイートプリキュア本編最終回からの流れでみるとツラかったのです。)

 スイートプリキュア最終回において、彼女たちはラスボスである「ピーちゃん」を受け入れ「悲しみ、負の感情を受け入れた上で夢に向かって進む」という選択をしました。その選択がはたして言葉だけのものだったのか、本気だったのか、行動で示されるのです。「ピーちゃんが存在する世界」も1つもキーワードになっています。

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プリキュア成分は少な目

この小説「プリキュアの小説」なのですが、プリキュアはほぼ描写されません。
彼女たちがプリキュアになるのは全10章中、9章の一部のみ。
全253ページ中、5ページのみです。(ページ割合にして2%です)
しかも変身してからも、プリキュア同士で「ごめん」だの「ありがとう」だのお互いがお互いの方向に向き合った「会話」で進行し(正に初代8話の「今、大事なお話をしているの!」状態)、最後に1発必殺技を放って終了です。(キックだパンチだの戦闘描写はほぼありません)

仮に、この小説が「60分のOVA」になったとしましょう。
このまま映像化すると、プリキュアとしての戦闘描写は1~2分になっちゃいます。

60分のOVA本編中、
開始から55分は重い1人称視点のお話。
2分のプリキュア戦闘描写を挟み
のこり3分の後日譚で、めでたしめでたし。

、といった感じになりますよね。
もう少しプリキュアになった後の描写が欲しかったです。
「もう一度、プリキュアになる事の意味」とは何だったのか、曖昧なまま終わった事が「プリキュアの小説」としては残念だったかな、と個人的には思いました。

いや、物語は面白いのですよ。間違いなく。

きっとこの著者にしか描けなかった物語

スイートプリキュアはもともと「絆」の大切さをを描いた作品であったと思います。
しかし後日譚としての小説で、ここまで内面を描くには相当な覚悟が必要だったのではないかと思います。

選択として当り障りの無い「楽しいお話」にすることもできたのでしょう。
しかしそれを選択せずに、あえて人の内面に踏み込み、その後の成長を描くというスタイルの小説にしたことは、この小説の著者でもあり、TVシリーズのシリーズ構成でもある大野敏哉さんが、スイートプリキュアの4人をいかに大切に思っている証なのではないかと思います。

彼女たちから逃げずに、成長した姿を描き切ることは、きっとこの著者にしか出来なかった事と思います。
良い小説を我々の元に届けてくれて有難う、と言いたいです。

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ニチアサの呪縛から解放されたプリキュア

・ひたすらに内面描写を繰り返す。
・派手なドンパチは全く無い。
・人が人を疑う描写を装飾せずに正面から描く。
・なかなかプリキュアに変身しない。
・変身後の姿は重要ではない。

絶対にニチアサ時代のプリキュアでは考えられませんよね。
まさに「小説ならではのプリキュア」だと思います。

そういった意味ではこの「小説スイートプリキュア♪」は、どうしても玩具を画面に映さないといけない「ニチアサ」の呪縛から解放されたプリキュアと言えるのではないでしょうか。

もちろんプリキュアという作品は強力な玩具会社がスポンサーとなることにより展開され、いわば「綺麗な世界」を描くことにより、子供にも大人にも人気を博しています。
そのニチアサの呪縛から逃れ、大人の世界を描くことに賛否はあると思います。
しかし個人的には全面的に肯定します。
だって、悩みながらも人が成長する姿を「真正面から偽らずに描く」ってやっぱり美しいじゃあないですか。
もちろんTVシリーズのプリキュアで描かれるような「きれいごと」も、この世の中には絶対に必要ですけどね。

そうですよね。この小説。
ニチアサを卒業した「当時、プリキュアだった女の子」にも是非読んでほしいのです。
きっときっと、我々「いい大人」よりも心に響くものがあると思います。

近くにそんな人がいる方、ぜひ勧めて下さい。多分キモがられますけどね。
(自分も中学生の娘に勧めてみようかな、と思ったり。)

 

 あと、関係ないうえにものすごく重箱の隅をつつく様なのですが一つ気になったのは
途中にあるハミィのこの台詞、

次の瞬間、黒い雲が唸り、ハミィを吸い込んだ。
「響ィ!エレン~!アコぉ~~!」
ハミィの甲高い声があっというまに遠ざかって消えた。
p182

 ハミィには「エレン」ではなく「セイレーン」と呼ばせてほしかった、とか思ったり。
(結構重要な要素だと思うのですよ、これ)

 

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「いい夫婦」の次へ

こんな小説を2016年11月23日(11月22日:いい夫婦の日)の次の日に出す辺りのシンクロニシティがさすがだな、と思います。
まさに「いい夫婦の次」の次元に入った響と奏。

最終章でね、デートをするのですよ、響と奏の2人が。
文字通り、本当にデートをするのです。

そこで語られるのは、
思春期特有の、恋愛感情とも友情感情とも区別できないような押し付け気味の「好き」から一歩成長したお互いを思いやる、大人の「好き」への成長。

そんな2人の姿を見られただけでも、僕は幸せな気分になれるのです。

 

(おわり)

 

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