「2018年「HUGっと!プリキュア」は新聞、雑誌、WEBメディアなどでも大きな話題となり「育児問題」「ジェンダー」に切り込んだ~」
って、本当だったのでしょうか?
そこで、2018年
新聞で「プリキュア」がどれだけ取り上げられていたのか調べてみました。(そしてWEBでの動向も(少しだけ)調べました)
まずは新聞で取り上げられた「プリキュア」。
<調査概要>
調査方法:国会図書館での新聞記事検索
調査方法:国会図書館の端末を使用し、新聞記事を検索。記事タイトルに「プリキュア」が含まれるもの、および内容が主にプリキュアに関連する記事を取得。
全国紙(読売、毎日、朝日、産経)+東京新聞の朝刊、夕刊の記事を取得。
(朝日新聞など本社が東京本社、大阪本社、名古屋本社、西部本社等に分かれているものは、その本社分全てを取得。地方ローカル(地域面)記事は除外。)
<2018年全国紙のプリキュアの記事数>
まずは2018年に全国紙で「プリキュア」がどれくらい取り上げられていたのか見てみます。
縦軸が記事数、横軸は新聞社を発行部数順にソートしています。
(結果)
グラフみると明らかなのですが2018年の「プリキュア」に関する記事は 圧倒的に「朝日新聞」で取り上げられていました。
(毎日、産経、東京はそもそもプリキュアの記事は無く*1、読売新聞で「映画の紹介」「ドラマの紹介」「15周年特集」が取り上げられた程度でした。
対し朝日新聞は13記事と飛びぬけて多く、内容も「映画紹介」「15周年企画」だけに留まらず「育児」「ジェンダー」等の内容に切り込んだものが半数以上を占めていました。
つまり「プリキュアが新聞でも取り上げられ~」はすなわち「プリキュアは朝日新聞で取り上げられ~」という事だったものと思われます。
逆に言えば、朝日新聞以外では2018年のプリキュアは「例年通り」の取り上げ具合だった、とも言えますね。
<朝日新聞グループだから当然?>
もちろんプリキュアシリーズは朝日放送テレビ(ABCテレビ)の制作であり、朝日新聞グループが取り上げるのは当然かと思われます。
(毎年、朝日新聞ではプリキュアがこのレベルで取り上げられていたのかもしれませんしね)
そこで「ふたりはプリキュア」が放送開始した2004年から同様にタイトルにプリキュアが付く記事(および内容がプリキュアの記事)を取得した所、下記の様になりました。
例年、各社ともだいたい1年間で0~4記事プリキュアの記事が書かれていました。(けっこう読売新聞が頑張っていました。)
しかし「2018年の朝日新聞」だけは突出して多くのプリキュア記事が書かれていた事がわかりました。
やはり「2018年の朝日新聞」はかなりの特異点であったことが伺えます。
<朝日新聞で書かれたプリキュア>
では、それらはどんな内容だったのでしょうか?
(先に言っておきますと、自分も朝日新聞の記事の1つでは「インタビューに答える」という形で協力しています。)
2018年にプリキュアが新聞記事になった記事タイトルは下記の通りとなっています。
(※読売新聞は朝夕刊欄に東京か大阪か記載、朝日新聞は記事タイトル後に【大阪】が付くものは大阪本社のみの記事です*2
<2018年プリキュアの新聞記事タイトル>
そしてどんな内容が多かったか把握するために、プリキュアに関する記事を3つ分け、分類分けをを行いました。
(プリキュア記事の分類(著者による))
1:紹介系(プレスリリース)
新しいプリキュアが始まった時、映画の告知、新製品などの紹介時の記事。
例)
「ふたりはプリキュア」変身ヒーロー女の子版 女児のハートつかみ続編(読売新聞2005年2月4日朝刊
「プリキュア」声優 ゴン中山が挑戦 8日朝 テレビ朝日系(読売新聞2014年6月6日夕刊)
2:事件、時事問題系
時事問題や、事件のタイトルに「プリキュア」が入る場合。
例)
「プリキュア」橋下氏つぶやいた!10分後「小1のやんちゃ娘が…」【大阪】(朝日新聞 2013/6/4 朝刊)
「詐欺撃退」オタク母の機転「プリキュア37人言える?」(産経新聞2014年1月24日朝刊)
3:内容分析系
プリキュアの分析や社会問題と絡めた記事。
例)
「プリキュア」10年目 時代に即応 かっこいい女子は永遠(産経新聞2013年6月18日朝刊)
プリキュア進化の15年 多様な価値観とり込み、子も親も魅了(朝日新聞2018年5月28日朝刊)
「2018年の朝日新聞」でのプリキュア記事を上記分類に沿って分けると、下記の様となり、半数以上(62%)がプリキュアの「内容分析系」の記事でした。
朝日新聞様における2018年プリキュアの「内容分析系」の記事は、
・(Dear girls)プリキュア初代プロデューサー鷲尾天さん 主人公は「男性に頼らない女性」(2018年3月5日)
・(ジャーナルM)支え合う育児、最強プリキュア(2018年5月5日朝刊)
・(文化の扉)プリキュア進化の15年 多様な価値観とり込み、子も親も魅了(2018年5月28日朝刊)
・日曜朝の東映アニメ 爽快な直球メッセージ【大阪】(2018年7月5日夕刊)
・男の子の「プリキュア」登場「多様性の大切さ表現」評価の声"(2018年12月3日朝刊)
・男の子プリキュア「受け手の想像にお任せ」制作側(2018年12月8日)
・(HUFFPOST)プリキュアが教えてくれる強さ(2018年12月11日朝刊)
・(ブルボン小林の末端時計)プリキュアが示す価値観(2018年12月15日日夕刊)
といったものがあり、
前半は「子どもは社会で育てる」といった「プリキュアを通した育児関連の価値観」や「男の子だってお姫様に」を通したジェンダーロールからの脱却が書かれ、「15周年記念の解説記事」を挟み、後半は「男の子プリキュア」を通しての多様性への挑戦、、他者評価ではなく自己評価の社会へ、といった記事が描かれている傾向にありました。
(もちろん、声優さんのインタビューや、輝木ほまれの恋愛に触れていたり、男の子プリキュアは初なのか?を製作者に聞いてみたりとか、決して「お堅い論表一辺倒」ではありませんでした)
この様に2018年「新聞媒体」で語られたプリキュアというのは、
主に「朝日新聞」を主体にしたものでありました。
では、WEBではどうだったのでしょうか?
WEBで語られたプリキュア
当然ウェブでも「HUGっと!プリキュア」は多くの媒体で表現されてきました。
(すいません!!ウェブ関連はあまりにも膨大で、ちょっと時間無くて集計しきれません。)
プリキュア記事は例年「MANTANWEB(まんたんウェブ)」や「アニメイトタイムズ |」「ORICON NEWS」や、自分が少し書かせてもらっている「 ねとらぼエンタ - ねとらぼ」などでは2018年「だけ」では無く「毎年の様に」たくさんプリキュアに関する記事がたくさん書かれています。
2018年はこれらの媒体でも当然「HUGっと!プリキュア」は大きく取り上げられていました。しかし、それは毎年の事なのです。
(その他、各新聞社様の持っているWEB媒体(朝日新聞デジタル等)もありますが、未集計です)
そうではなく「2018年に突然、プリキュアに関する記事数が増えた媒体」を調査した所、1つ大きく目立つ媒体がありました。
ハフポスト日本版(ハフポスト日本版 | ハフポスト)です。
ハフポスト日本版は「朝日新聞社」との合弁事業で行われてる、との事で、ここでもやはり「朝日新聞」が出てきます。
「ハフポスト日本版」は朝日新聞社との合弁事業で行われており、執筆は朝日新聞が担当している。
とにかくハフポスト日本版の2018年のプリキュアの熱はものすごくて、それが最も顕著に表れたのが2018年12月2日。
初の男の子プリキュア、キュアアンフィニが登場した回でした。
何とまだ放送が終わる前の8:51分に「史上初 男の子プリキュア誕生 シリーズ放送開始から15年」という記事が投稿され、一気に世間の話題となりました。リツイートは22000を越え、はてなブックマークは450を超える等大きな反響となりました。
【速報】史上初 男の子プリキュア誕生 シリーズ放送開始から15年 #プリキュア https://t.co/tVobKJhoCP
— ハフポスト日本版 (@HuffPostJapan) 2018年12月1日
この日に「アンリ君がプリキュアに変身する」という事前告知はありませんでした。(もしかすると変身するかも、という推測がファンの中であったレベルです)
したがって(東映アニメがリークしていない限り)、この記事は「この回に男の子プリキュアが誕生するだろう」を見込んであらかじめ仕込んでおいた記事だと思われます。
で、変身した瞬間に記事を上げるという離れ業をやってのけたのです。ライター様のものすごい情熱と執念を感じます。
その他、ハフポスト日本版は2018年に9記事も「プリキュア」に関する記事が書かれ、
今度のプリキュア、「子育て」がテーマに 「おかあさんとしてのプリキュア」描く | ハフポスト
プリキュアが「男の子だってお姫様になれる!」と叫んだ。はぐプリ19話が伝えた、すごいこと | ハフポスト
映画『プリキュア』総勢55人登場でギネス世界記録認定 初日動員も好調で歴代1位 | ハフポスト
初代プリキュアと夢の共演。『HUGっと!プリキュア』に登場 | ハフポスト
低スペックでも、「ありたい姿」をあきらめない。大人こそ「HUGっと!プリキュア」を観るべき理由 | ハフポスト
キュアアンフィニ誕生。いままで男の子のプリキュアっていなかったの? | ハフポスト
「女だから、男だから」で苦しむ私達に「HUGっと!プリキュア」が教えてくれた、手をつなぐこと。 | ハフポスト
「HUGっと!プリキュア」最終回、出産シーン描かれ反響 シリーズ通して社会問題に切り込む | ハフポスト
そのどれもがWEBで大きな反響となりました。
それ以前のハフポスト日本版のプリキュア記事は2014年のゴン中山まで(プリキュア声優にゴン中山が仲間入り「僕自身もパワーをいただきました」 | ハフポスト)さかのぼらなければならない事を思うと、ハフポスト日本版は2018年、かなりの力を入れてプリキュアをプッシュしていた様です。
<話題になることは良い事?>
新聞でもウェブでも「HUGっと!プリキュア」は「朝日新聞系列」で取り上げられ、そこを起点として世間に話題を届けていたものと思われます。
(もちろん、それだけではなく他媒体での影響も多々あるかと思います(自分の書いた「ねとらぼ」での記事なども少しは影響があった・・のかな?かもしれません・・けどそんなに影響ないのかな・・?)
ただ、普段「プリキュアを見ない層」へのアプローチという点においては「朝日新聞」と「ハフポスト日本版」の影響はかなり大きかったものと思われます。
当然、「話題になる」という事は悪い事ではありません。逆に「話題になる」という事は良い事の方が多いと自分は考えます。
2:6:2の法則に従えば、ファンの絶対数を増やすためには分母を大きくするしかありません。そのためには「話題になって、たくさんの人が見てくれる」事は人気の維持にはとても重要な事だと思われます(同時にアンチを呼び込む事にもなるので諸刃の剣ではありますが)
ただ2018年後半はプリキュア関連の「言葉が独り歩き」してしまっている現状に自分は少しモヤモヤしていました。
「プリキュアを見ていないのに、文句を言う人」
「話題を消費だけして去っていく人」
「散々言及したのに、すでにプリキュアの存在すら忘れている人」
もたくさんいたものと思われます。
そんな人をプリキュア界隈にたくさん呼んでしまったのは、朝日新聞様だけではなく、少しでもメディアやブログで「多様性」などを絡めたプリキュアの発言をしていた自分(の様な人)にも責任もあるのでは無いのか、「もうちょっと言葉を選んで、誤解を与えない言葉でプリキュアの良さを伝えることは出来なかったのか?」、と少しばかり反省しています。
ただ、その分、メディアへの露出に伴いプリキュアファンもたくさん増えたのではないのか、って思います。その新しくファンになってくれた人を、この先もプリキュアファンでいてくれるために。
そして何よりも、子供達にプリキュアをみてもらうために。
(そのためには「一緒にみている親」に誤解が起きない様にプリキュアを伝えなければなりません)
2019年「スター☆トゥインクルプリキュア」
第1話をみる限りですが「元気あふれる、楽しいプリキュア」になるオーラをひしひしと感じます。
2019年はプリキュアの「楽しさ」をもっともっと伝えられる様にしていければ良いなって思います。
(おわり)
全国紙における「プリキュア」の記事一覧
2004~2018年;地方版を除く
(おわり)